中学の時、体育の授業で肺活量を調べるというのがあった。
3100かそれくらいだった。
平均が3300だったかで、平均より低いぞこれはやばいと思った。
陸上部の長距離に所属しているにもかかわらず低い肺活量。種目間違えてんじゃないの?状態だった。
その前の授業か何かで、肺活量と長距離走の関係みたいのがあった。
単純に肺活量が多いイコール長距離走が速いというものだった。
クラスで一番多いのが4400だった。そいつは、だったら俺長距離速いんじゃないの??的に調子に乗っている感じだった。
翌月に学校内陸上競技大会があった。
3000mにはクラスから2人出る。当然、俺と、もう一人は肺活量1位のやつが立候補した(俺は知らない間に名前書かれてた)。
昼休みや放課後に練習が始まった。
俺の後に続いて肺活1位が付いて走るというのを続けた。つかず離れずのペースを維持し、わざと呼吸を乱して疲れまくってる演技をした。ゴール後も倒れ、肺活によくついてこられるね速いねと言葉を送っていた。やっぱ俺速いんだみたいなことを言ってた。
そして校内陸上大会当日。
短距離のスターターをやったり、高跳びのマットを用意したり、女子800mの着順&タイムを取ったり、友達に靴を貸したりと朝から忙しく動いていた。
種目が近づく中で、みんなアップしてんのに俺だけ時間ぎりぎりまで記録簿を付けていた。
もう始まるぞというところで、短距離のヤマダに仕事をパスしスタート地点に並ぶ。とりあえず靴紐だけは結び直した。肺活は練習通り俺についていくと言う。そうかそうか。
男子3000m。大会記録保持者は兄だった。
関東6位の鬼畜が打ち立てたバカみたいな記録なので目標には出来ないが、1つだけやり遂げるぞと心に決めていたことがあった。と同時に、15周もするのかめんどくせーなとも思っていた。
12人がスタートラインに並びいざスタート。
最初に先頭に立ったのは当然俺。長距離の場合、いつもは尻上がりに走るのだけれど今日は違う。
当然、肺活がついてくる。ここで第1段階はクリア。
500m通過、肺活が離れる。第2段階クリア。
1000mは3分10秒で通過。
1500m辺りでサッカー部キャプテンのミノルに追いつかれ1位集団形成。そのまま2900mまで一緒に走る。
で、残り100m、スパート合戦で見事に負ける。
はっきり言って、前半の1000m通過地点で力を使い果たしていた。
ゴールタイムは10分5秒。
ただ、目的は達成できた。
それは、「肺活を周回遅れにすること」である。
アウトコースを走りながら、肺活に「邪魔」とエールを送った。
記録は当然練習より遅かった。練習時の記録は11分45秒。それなのに9分30秒ペースについちゃったんだから中盤以降の失速は明らか。これが1ケ月かけた俺の作戦だった。
自慢の肺活量はどした?とか煽りまくってから短距離のスターターをするためにスタート地点へと向かったのであった。
当時の愛読書はかってに改蔵だったので、俺の性格はすぐに察せるだろうと思う。